エッフェル塔、夏と冬で高さが違う!?~膨張と収縮が生む”動く建築”の秘密~

皆さんこんにちは!タナベ住建の林です。

今回はパリのエッフェル塔について紹介しようと思います。

パリの象徴といえば、多くの人が思い浮かべるのが「エッフェル塔」。優雅なシルエットと美しい鉄骨の構造美が魅力のこの塔は、1889年にパリ万国博覧会のために建てられ、今もなお世界中の観光客を魅了し続けています。

そんなエッフェル塔には、ちょっと信じがたい事実があります。それは——「夏と冬で高さが違う」というもの。これを聞いたとき、「え、本当に!?」と驚く人も多いでしょう。実際、この話は都市伝説でもなんでもなく、科学的にも実証された現象です。

ではなぜそんなことが起きるのか? この記事では、エッフェル塔の構造や素材に着目しながら、その秘密をじっくり解き明かしていきます。

■ 鉄が“生きている”?――金属の熱膨張という現象

まず理解しておきたいのが、「金属は温度によって伸び縮みする」という性質です。これは「熱膨張(ねつぼうちょう)」と呼ばれる物理現象で、ほとんどの物質は、温度が上がると分子が活発に動き、空間が広がって大きくなります。逆に温度が下がると分子が落ち着き、縮むのです。

鉄や鋼(こう)は、特にこの影響を受けやすい金属の一つです。エッフェル塔は約7,300トンの鉄材で構成されています。つまり、この鉄材が季節によってわずかに膨張・収縮することで、構造物全体が“呼吸”するかのようにサイズが変わるのです。

このことは理論だけでなく、フランスの気象研究機関や土木工学者たちによって観測されており、エッフェル塔の高さが最大で15〜18センチメートル変化することが確認されています。

■ 数字で見る変化:エッフェル塔の伸び縮み

エッフェル塔の公式な高さは約330メートル(※2022年に新しいアンテナが追加されて更新)。しかし、この高さは年間を通じて一定ではありません。

夏の場合:
• 鉄が温まって膨張する。
• 地表面温度が30〜35℃を超えると、鉄骨が徐々に伸びる。
• 最大で15〜18cmも高くなる。

冬の場合:
• 気温が下がり、鉄が収縮する。
• 気温が0℃〜氷点下になると、塔全体がわずかに“縮む”。

たとえば、330mの塔が18cm伸びたとしても、割合にすればわずか約0.05%。しかし、構造物全体として見れば、これはかなりのインパクトです。たとえるなら、人間の身長が日によって2〜3cm変化するようなもの。それが無意識のうちに起きているのだから驚きです。

■ 建築的な工夫とその影響

では、「そんなに伸び縮みして壊れないの?」と不安になるかもしれません。ところが、エッフェル塔の設計者ギュスターヴ・エッフェルは、この金属の特性をしっかりと理解したうえで、建物の設計にそれを織り込んでいました。

 ■ エッフェル塔の構造的特徴:

• パーツ同士がリベット(鋲)で固定されており、柔軟性がある。

• 接合部には若干の“遊び”があることで、金属の膨張や風の揺れを吸収。

• 三角形をベースとしたトラス構造で、重さを分散し、変形にも強い。

つまり、エッフェル塔は「しなる」ことを前提に設計された柔軟な建築物なんです。地震は少ないフランスですが、風圧や気温差には十分に対応できるような構造がとられています。

■ 実は「傾く」こともある!?

実はエッフェル塔は高さだけでなく、日照によって“傾く”こともあるんです。日差しが片面だけに当たると、熱膨張の具合も左右で異なります。その結果、太陽の方向にわずかに塔が傾くという現象が起こるのです。

これは観測装置を使わなければ気づかないほどの微細な傾きですが、構造力学的には非常に興味深い事例といえるでしょう。まるで塔が「お日様の方を向いている」かのようにも感じられて、なんだかロマンチックですよね。

■ この現象、日本にもある?〜スカイツリーや鉄橋でも

さて、こうした金属の伸び縮みはエッフェル塔だけの現象ではありません。実は、日本の建築物や構造物でも同じようなことが起きています。

 東京スカイツリー
• 鋼鉄製の塔で、高さ634メートル。
• 高温時には最大で5〜10cm程度の伸び縮みが起きることが確認されている。

 鉄道の橋梁(きょうりょう)
• 鉄橋には「伸縮継手(しんしゅくつぎて)」という構造があり、気温による金属の膨張・収縮を吸収。
• これがなければ、レールがねじれたり、橋が破損する可能性も!

つまり、鉄を多く使った構造物には**「伸びることを前提とした設計」**が不可欠なんです。エッフェル塔はその先駆けとして、いまも技術的な手本となっています。

■ エッフェル塔が教えてくれる“生きている建築”という発想

私たちは普段、「建物=動かないもの」と思い込んでいます。でも、実際はエッフェル塔のように、建築物も自然とともに生きているのです。風に揺れ、気温で伸び縮みし、太陽の方を向くように傾くこともある。

それはまるで、建築物が「呼吸している」かのようです。ギュスターヴ・エッフェルは、それを予見して設計したからこそ、130年以上も経った今でも、エッフェル塔は健在であり、美しさと強さを併せ持って立ち続けているのです。

■ まとめ

• エッフェル塔は夏と冬で最大18cmほど高さが変わる。

• これは「金属の熱膨張と収縮」によるもの。

• 設計者はこの特性を見越して、柔軟性のある構造を採用していた。

• 日照によりわずかに「傾く」こともある。

• 同様の現象はスカイツリーや鉄道橋など、現代建築にも広く見られる。

エッフェル塔はただの観光名所ではなく、「生きた構造物」。その美しさは、見た目だけでなく、科学と技術の結晶としての魅力にもあふれているのです。

今度パリに行く機会があれば、エッフェル塔の“呼吸”に思いを馳せてみてください。夏と冬、見るたびにちょっとだけ違う塔が、あなたを迎えてくれるかもしれません。

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