ビルに“13階”がないって本当?――数字が消える建築ミステリー

高層ビルのエレベーターに乗っていると、ふと「ん?」と違和感を覚える瞬間があります。

たとえば、12階の次がいきなり14階になっていたり、4階や9階のボタンが見当たらなかったり……。

これ、実は見間違いではありません。

建築の世界には、数字が“わざと”消されるミステリーが存在しています。

なぜそんなことが起こるのか?誰が決めたのか?安全上の問題では?など、さまざまな疑問が湧いてきますよね。

今回はその中でも特に有名な「13階問題」を中心に、“数字が消えるビル”の謎に迫ってみましょう。

1. 本当に「13階」は存在しないの?

結論から言うと、13階は物理的にはちゃんと存在しています。

つまり、13階分の床はあり、そこに部屋やオフィスがあることも珍しくありません。

ではなぜ「エレベーターの表示には13階がない」のか?

これは、主に西洋の文化的背景に理由があります。

欧米、特にキリスト教圏では、13という数字が「不吉な数」とされてきました。

中世のころから「13人目には不運が訪れる」「13日は呪われた日」といった迷信が広まり、

現代に至るまで多くの人々に“忌避される数字”として根付いているのです。

2. 不吉の起源は「最後の晩餐」?

13という数字が不吉とされる最も有名な逸話が、イエス・キリストの最後の晩餐です。

この晩餐にはキリストとその弟子たち――つまり13人が同席していました。

その中で13人目に座ったとされるのが、裏切り者のユダです。

この逸話が、「13人目=災いの象徴」という迷信を生み、

それが現代の建築文化にまで影響しているといわれています。

この他にも、北欧神話の神ロキが“13人目の客”として登場し、悲劇を招いたという説など、

13にまつわる不吉なエピソードは世界中に残っています。

3. アメリカのビルでは「13階」が消える

13階を飛ばす建築文化は特にアメリカで顕著です。

エレベーターのボタンには「12」の次が「14」になっていることが多く、

ビルの図面やフロア案内でも「13階」は完全に“スキップ”されているのです。

アメリカでの調査によれば、高層ビルの85%以上が13階を表示していないともいわれます。

ときには、「13階にある部屋に泊まりたくない」という宿泊客への配慮として、

ホテル側が最初から13階を「なかったこと」にしてしまうことも。

つまり、存在しているけど“名前を変えられた”フロアが13階なのです。

4. 名前を変える“知恵”たち

「13階を表示しない」以外にも、実はいろいろな工夫があります。

● 別の名前にする

たとえば13階を「12A階」や「M階(Mは13番目のアルファベット)」と表示するケースも。

これで「13」という数字を避けつつ、階数的にはきちんと管理できます。

● 機械室にする

機械室や倉庫にすることで「一般人が使わない階」とし、避けられる印象を薄める方法です。

ホテルやオフィスビルでよく見られます。

● そもそも建てない

設計段階から13階分を作らないというケースもあります。

これはかなり稀ですが、文化や迷信に強く影響される地域では選択されることも。

5. 日本でも13階は消える?

では日本ではどうでしょうか?

日本では13という数字にそれほど強い嫌悪感はありません。

ですが、日本独自の「不吉な数字」があり、それが建築に影響しているケースがあります。

● 4階と9階が嫌われる

「4=死」「9=苦」と読めることから、

病院やマンション、特に老人ホームなどでは4階・9階を飛ばす設計があるのです。

エレベーターの表示では「3階→5階」や「8階→10階」となることもあります。

これは、実際に階を飛ばしているのではなく、数字を避けているだけなので、

建物としての階数はきちんと連続しています。

つまり、日本にも“数字を消す文化”は確かにあるのです。

6. なぜここまで数字を気にするのか?

「物理的には何も問題ないのに、なぜ数字だけを変えるの?」

合理的な考え方からすれば、少し不可解に思えるかもしれません。

しかし、建築物は人が長時間滞在する空間です。

ましてや「住む」「泊まる」「働く」など、日常を過ごす場所ならなおさら。

つまり、数字ひとつで不安になる人がいるなら、避ける方が合理的とも言えるのです。

特にビルの建設には莫大な費用がかかります。

たった一つの階の数字のせいで入居者が減るくらいなら、最初から避ける方が得策。

これこそが、“数字を消す建築”の最大の理由なのです。

7. 現代の建築が見せる「配慮」と「遊び心」

最近では、この“数字の消失”を逆手に取って、面白いアイデアを取り入れている建築も登場しています。

たとえば:

  • あえて「13階」をテーマルームにするホテル
  • 「13階」をラッキーな階としてリブランディングするオフィス
  • 「13F ONLY」と書かれたバーやラウンジ(隠れ家的に人気)

つまり、数字に振り回されるだけでなく、数字に意味を持たせて人を惹きつける時代になってきているのです。

終わりに:あなたの「13階」はどこにある?

「13階がないビル」と聞いて最初は不思議に思ったかもしれません。

でもその背景には、文化、歴史、心理、そして現代の建築が人とどう向き合ってきたかという深いストーリーが隠れています。

次に高層ビルに乗ったとき、ぜひエレベーターのボタンをじっくり見てみてください。

そこに「13」があればラッキーかも。

もしなければ、もしかしたら――あなたは“消された階”に、すでに足を踏み入れているのかもしれません。

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